経営コンサルタントの大前研一氏に、36才会社員から質問がきた。内容は「この変化の激しい時代に、もし大前さんが高校生だったら、どのような進路(大学の専攻やその後のキャリア)を選びますか?」というものだ。以下、大前氏の答え。
* * *
う~ん、いま高校生になるのは嫌だけど、僕ならできるだけ早く就職するな。高校を出たら就職! いや、中卒でもいいな。業界や職種を問わず、どこでもいいから就職する。というのも、かつては学歴で昇進や昇給が決まったけど、これからますます学歴は意味がなくなるからだ。
高校時代に受験勉強に費やす時間や、大学で15年間同じノートを読むようなアホな教授の授業に出るのは時間の無駄。合コンやサークル、これも時間の無駄。
なるべく早く働き始めて、心の中にはたった一つのイメージを描く――それは松下幸之助だよ。井原西鶴でも本田宗一郎でもいい。立志伝中の人物の伝記をたくさん読みながら、オレも自分の「二股ソケット」(松下電器産業創業当初のヒット商品)を見つけるぞ、10年後にその会社で社長になるにはどうしたらいいか、と考える。
そうやって歯を食いしばって働いていれば、22~23歳までには、だいたいビジネスというものがわかってくる。同時に自分に欠けている専門知識が何かも見えてくるから、このタイミングで大学へ進学する。
高卒認定試験(かつての大学入学資格検定)を受け、それまでの貯金で、あるいは親に余裕がある場合は少し脛をかじらせてもらって、24~25歳で大学に入り直すわけだ。そして本当に自分が勉強したいことだけを勉強する。大学を卒業するのは28~29歳だから、普通に進学した人より4~5年遅れるけど、そのかわり人生経験は百倍違うよ。
※週刊ポスト2011年4月22日号