再臨界が起きたケースでも、多くの「煽り報道」がいうような「核爆発」はまずない。東芝の原子力事業部で30年間にわたり設計や安全解析に従事した吉岡律夫氏は、具体的にそのシミュレーションをした。
「東芝時代に、再臨界時のエネルギーを計算したところ、圧力容器を破損させるには遠く及ばず、せいぜい容器内の水を高さ20mの天井まで飛ばすかどうかという程度でした」
大事故につながった東海村JCO事故(※:下記参照)でも、臨界状態になったウラン溶液は20時間にわたって核分裂連鎖を続けたが、爆発はしないし、広範囲に飛び散ったわけでもなかった。臨界=爆発でないことは、この例でもわかる。
再臨界が起きない限り、原子炉の温度は放っておいても下がっていく。現在、原子炉を熱くしている原因は、核分裂生成物がさらに放射線を出して別の物質に変化し、その物質がまた放射線を出して別の物質に変わる……という「崩壊」現象が起きており、その際に「崩壊熱」を発生するからである。崩壊が終われば発熱も終わるのだが、面倒なことに、長い反応では100万年も崩壊が続くものもある。ただし、短い期間で崩壊が終わる反応も多いため、「崩壊熱」は臨界停止後、加速度的に減っていく。
※1999年、茨城県東海村の核燃料加工施設「ジェー・シー・オー」で起きた事故。誤った手順で加工作業が行なわれた結果、ウラン溶液が臨界状態になり、作業員3名が大量に被曝、うち2名が死亡した。事故調査委員会は、周辺住民を含め667名が被曝したと認定した。
※週刊ポスト2011年4月22日号