夏場の計画停電が懸念される昨今だが、JR東日本やNTT東日本、鉄鋼各社など、自社工場や設備で大量の電力を消費する企業は、自前の発電所を設置している。たとえば、JFEスチールは震災発生直後から千葉市にある製鉄所内の火力発電所を稼働させた。通常は平日の日中のみの稼働だが、現在は休日も24時間稼働となり、余剰電力を東電に供給。新日鉄も千葉・君津市にある製鉄所の火力発電所をフル稼働させ、発電量の約半分(50万kw)を東電に卸している。
「企業内発電所」が作られる理由は、表向きは「工場のラインを常に稼働させる」(新日鉄広報センター)、「首都圏の路線や信号などが停止しないようにする」(JR東日本広報室)というが、本音は別にある。発電所を保有する企業の経営幹部が明かす。
「正確な数字は控えさせていただくが、電力会社から買うより自社で発電するほうがはるかに安上がりです。建設コストを勘案しても、長期的には十分にお釣りがくる。電力会社から電気を買うのはバカバカしい話です」
大企業はもともと一般家庭より電気料金がずっと安い。それでも「高すぎる」というのである。ならば我々もその安い電気を買いたいところだが、それはできない。
2000年の電気事業法改正により、電力9社以外の電気事業者(PPS)に電力小売りが認められるようになったが、その対象は「契約電力50kw(中小企業の工場に相当)以上の需要者」という規制があるため、一般家庭への小売りはできないのである。
※週刊ポスト2011年4月22日号