今回の大震災では、アメリカが「オペレーション・トモダチ」を展開した一方、中国、ロシアが日本の領空にヘリコプターや空軍機を接近させるなどの事態が起きている。
京都大学大学院教授で、社会経済学・社会思想史を研究する佐伯啓思氏はいう。
「世界各国は、日本復興をめぐる政治的な綱引きをしています。原発大国1位の米国と2位のフランスが、福島原発への支援を競っているのは、自国の原発政策への影響を防ぐと同時に、今後の原発市場をめぐる駆け引きでもあるわけです。
米国が狙っているのは、日本が復興するに向けて生じる復興特需です。ジェームズ・アワー元国防総省日本部長が『復興のためにTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を批准し、農業改革せよ』と述べたように、震災や原発事故で打撃を受けた農産物市場に、TPPを契機として食い込んでこようとするのは確実です」
事実、米投資情報週刊誌「バロンズ」は3月20日付で「日本は買い」と題する記事を掲載した。東日本大震災が起きた3月11日以降、日本株は12%も下がった。マーケットが過剰反応しているのは明白で、もともと大震災以前でも割安だった日本の株はさらに安くなっており、絶好の投資機会と書いたのだ。米国はこの震災すら、投資の一環と捉えている。
佐伯氏は、この流れを危険視している。
「そうして復興を米国に委ねてしまえば、今度こそ日本は、グローバル金融資本主義に呑み込まれてしまう。
日本はいまこそ、アメリカ型の市場競争やグローバリズムから方向転換し、新しい経済モデルを考え出さなければなりません。社会的なインフラの再構築、中期的な被災地の復興から長期的な国土計画まで、強力な政府が主導する壮大なプランを、日本は自ら打ち立てなければならないのです。
いわば、関東大震災後に後藤新平が描いた帝都復興計画のようなことが求められているわけですが、戦後とのアナロジー(類比)でいえば、第二次大戦の戦後復興を、GHQ抜きでやり直すということでもあります」
戦後の日本は、GHQによる間接統治のもと、奇跡的な成長を遂げた。しかし、今回もまたそれを繰り返せば、日本は今度こそ米国の経済的属国に堕してしまうかもしれないというのだ。
※週刊ポスト2011年4月22日号