宮城・東松島市の避難所近くで、航空自衛隊松島基地の隊員が炊き出しを行なっていた。
「すいませーん、こちらに並んでください!」
声を張り上げていたのは、隊員ではなく、東京からやってきた民放キー局のカメラクルーだった。並ぶ必要もないのにわざわざ一列に集めて、「画作り」をしていたのだ。
震災から1か月が過ぎ、被災地は一刻も早く日常生活を取り戻そうと動き始めている。そんな中、一部取材陣の振る舞いが被災者の反感を買っている。
津波で壊滅的な被害を受けた仙台市若林区の避難所となっている中学校の校門には、3月末頃に〈報道関係の方は立ち入りご遠慮下さい〉という貼り紙が出された。
管理する区の職員がいう。
「食事をしたり、布団に横になったりしているところに、突然、カメラやマイクを向けられることが避難者の精神的な負担になるという声があり、取材を一切お断わりしました」
この避難所では、校門付近に停められた中継車が邪魔になって救援物資の運び込みに支障をきたしたり、場所を選ばずに行なわれていたインタビューで狭い通路が塞がれたりしたために、被災者たちのストレスが高まっていたのだという。
若林区の別の避難所で被災者代表を務めていた男性が憤る。
「メディアは“かわいそうな被災者”を取材したいんでしょう。地震と津波の記憶はなるべく忘れたいのに、あの時のことを思い出させるように根掘り葉掘り聞く。小さな子供にまで、津波に流されて亡くなった身内の話をさせようとするんです。その後に、『今、必要なものは何ですか』と聞くので、私が『休息が必要なのに、あなたに邪魔されている』と答えると、記者はバツの悪そうな顔をして、もう取材に来なくなりました」
※週刊ポスト2011年4月22日号