2005年7月、総理大臣の下で国の防災基本計画を作成する「中央防災会議」の「首都直下地震対策専門調査会」は、「東京湾北部地震」が起きた場合の被害を想定した報告書を公表した。政府の地震調査委員会によれば、それが現実となる確率は「今後30年以内に70%」。もはやいつ起きてもおかしくない状況にある。
「とくにこれから数年のうちに来る確率が高いと思います」と話すのは京都大学防災研究所地震予知研究センターの遠田晋次准教授だ。
「首都地域は海側のフィリピン海プレートと太平洋プレート、陸側の北米プレートの3枚がひしめきあっていて、その地下でいろいろなことが起きています。非常に予測しにくいところなんですが、それでも、東日本大震災の影響は受けているはずです。関東でもプレート境界や断層などにさまざまなゆがみが出ているのは間違いない。小さな地震がたくさん起こるだけで穏便に終わってくれればいいのですが」
「首都直下地震」とは、1995年の阪神・淡路大震災を受け、同防災会議が首都で起こりうると想定した18のタイプの直下型地震の総称だが、なかでも前述、東京湾北部地震についてのデータは衝撃的だ。これによると、合計約20万棟の建物が全壊し、これによる死者が3100人。続けて報告書は火災被害についてこう記す。
<環状6号線、7号線をはじめ木造密集市街地が広域的に連担している地域などを中心に、火災が同時多発し、大規模な延焼に至ることも想定される>ことから、 65万棟の家屋が焼失。またそうした地域では、<消火活動が著しく支障を受け、被害が拡大することも想定され>、火災による死者は6200人に上る。
つまり、木造家屋が密集する市街地では消火活動が思うにまかせず火の海となり、65万棟が焼失、逃げ遅れる人が多数発生すると予測しているのだ。それにしては、建物全壊の数字と合わせ、犠牲者数が少ないように思える。
いずれにせよ中央防災会議は、東京湾北部地震による死者の数を計1万1000人と予想。同会議が別に行った、都心西部を震源とする直下型地震の場合、死者数はさらに増え、1万3000人に上るとしている(首都直下地震で発生する津波の高さは最大でも1m程度とされており、被害想定はなされていない)。
※女性セブン2011年4月28日号