TBSを退社し、華やかな“女子アナ”の座を捨てた小島慶子(38)は、現在、TBSラジオ『小島慶子キラキラ』(月~金曜・午後1時~3時30分)のメインパーソナリティーを務めている。彼女が信じるラジオの可能性とは。
小島は大学を卒業してアナウンサーになりたいという夢を見事に叶え、1995年晴れてTBSに入社。同期には小川知子や堀井美香がいる。女子アナといえば並のアイドル歌手よりも高い人気を誇り、一挙手一投足が注目されるまさに黄金期にその座を得た小島の初仕事は、テレビの生ワイド番組のお天気お姉さんだった。
「季節を感じられる様子を自分なりの言葉で表現してみろ」とスタッフからいわれ、「この時期、道端に蝉が死んでいてびっくりすることがあります…」とレポートすると、放送後プロデューサーに呼び出された。
「新人のくせにウケねらうんじゃないよ。“秋の気配が感じられるようになりましたね”というのが女子アナだろう。女の子らしく普通にやればいいんだよ」と怒鳴られ、ショックを受けたという。
「局の制服を着てブランドイメージのために尽くす」「かわいく、品よく、出しゃばらず」これらのことが求められる女子アナという職業に対し、小島は次第に息苦しさと限界を感じるようになった。
彼女にとっての転機は、1998 年、TBSラジオの夜の生番組『BATTLE TALK RADIOアクセス』のパーソナリティーへの起用だった。田中康夫(55・作家・元長野県知事)や宮崎哲弥(48・評論家)ら日替わりのパートナーを相手に正面から議論する姿勢が高く評価され、『アクセス』をTBSラジオの看板番組へと成長させた。
「ラジオはテレビから都落ちした人が行くところだと思っている人もいますが、私はいわば別物だと思っています。テレビとラジオは違う役割をもっている。受け手とその場で何を共有しようとしているのか、というメッセージ性がはっきりしているのがラジオ。受け手との距離が近いことに気づいて、ラジオの楽しさにどんどんのめりこんでいきました」(小島)
それとは逆に、テレビは「悲しいニュースを読んでいるときに、化粧がどうだとか、洋服がどうだと突っ込まれるのがテレビ。話し手と視聴者は隔てられているので視聴者はどうしても品定めしてやろうという気になってしまうんですね。その点、ラジオはお互いの姿が見えないぶん対等なんです。受け手との距離はラジオのほうが圧倒的に近い。それがラジオの魅力です」(小島)。
マスを対象としたテレビではなく、聴く人にピンポイントでメッセージが伝わるラジオ。彼女はその力を信じた。広告収入などの数字を見れば確かに、斜陽がささやかれる業界ではある。しかし小島は「こういう災害時に、知りたい情報を得て、それを人と分かち合いたいと思ったときに、ラジオほど適したメディアはありません」といいきる。
※女性セブン2011年4月28日号