国内

陸自ヘリ隊員「米軍は独自判断OK。ウチは上の判断が絶対」

 米軍の活躍が“割り増し報道”される一方、10万人が動員された自衛隊の活動は、ともすれば見過ごされてはいまいか。震災発生から約30日間、救援物資の運搬や不明者捜索で被災地を飛び回った関東地方の陸上自衛隊ヘリ部隊の隊員が、その実情を明かした。

 * * *
 私の任務は急患、怪我人、住民の救出と搬送。それから、孤立地域へ食料や水を運ぶことでした。初動に関しては、自衛隊は満点をつけて良いぐらいの出来だったと思います。 問題がなかったわけではありません。たとえば、司令部から下りてくる情報の正確性です。着陸予定の学校名の漢字の読み方が間違っていたりしたため、数機のヘリが上空で待機せざるを得ませんでした。
 
 災害派遣のヘリは、1人でも多くの被災者を乗せることが最優先なので、機体が重くならないように、燃料の搭載を少なくします。効率的に離着陸ができなかったのは残念でした。
 
 それ以上に悔しい思いをしたのは救援物資の運搬です。一部の報道で「米軍はどんどん物資を投下しているのに、自衛隊はやっていない」と批判されました。意見が分かれるところかもしれませんが、米軍の場合は各機が独自に判断して行動できるのに対して、自衛隊は司令部の判断が絶対です。
 
 実際には、米軍の投下した場所は孤立集落ではなかったり、すでに食料や水が届けられていたりしたケースも多かった。特に物資が限られていた初動時には、やみくもな投下が正しいわけではなかったと思います。
 
 米軍ヘリは着陸の判断も自由にできる。彼らは瓦礫で埋め尽くされているところであっても、隊員がパラシュートで降下し、瓦礫を除去してヘリを着陸させる。一方、自衛隊は救援される側と連絡を取り、安全を確保してから着陸しなくてはならない。われわれも米軍と同様の降下、着陸技術は持っていますが、それをできないのは歯痒く、米軍を羨ましくも感じました。

※週刊ポスト2011年4月29日号

関連キーワード

トピックス

モテ男だった火野正平さん(時事通信フォト)
【火野正平さん逝去】4年前「不倫の作法」を尋ねた記者に「それ俺に聞くの!?」 その場にいた娘たちは爆笑した
週刊ポスト
「●」について語った渡邊渚アナ
【大好評エッセイ連載第2回】元フジテレビ渡邊渚アナが明かす「恋も宇宙も一緒だな~と思ったりした出来事」
NEWSポストセブン
三笠宮妃百合子さま(時事通信フォト)
百合子さま逝去で“三笠宮家当主”をめぐる議論再燃か 喪主を務める彬子さまと母・信子さまと間には深い溝
女性セブン
氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
「SUNTORYドリンクスマイルBAR」
《忘年会シーズンにこそ適正飲酒を》サントリーの新たな取り組み 自分に合った “飲み“の楽しさの発見につながる「ドリンク スマイル」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン