過去に都知事選・参議院選に出馬したことのある経営コンサルタントの大前研一氏。今でも「日本の窮状を救うため、ご出馬いただけないだろうか?」という声が寄せられるが、果たして氏はどうこたえるか?
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申し訳ないけれども、僕が政治をやることは二度とありません。1995年4月の東京都知事選と7月の参院選で一敗地にまみれた際、『大前研一敗戦記』(文藝春秋刊)を書いて政治からは足を洗った身だからね。
あの経験で得た教訓は何かというと、正しさがすべての経営の世界と違って、政治の世界では、本当のことをいったら絶対選挙で当選しない、当選するには嘘をつかないといけないということ。今の日本では、政治家になるのは嘘つきになるということなんだよ。
たとえば、いま日本の国家財政は借金が1000兆円に膨らんでデフォルト(債務不履行)寸前の窮状にあるわけだけど、それを解決するためには何をすべきか? 現実問題として、日本に財源たりえる天然資源がない以上、国民が負担するしかない。
つまり、本物の政治家なら「借金を子孫に残してはいけません。現役世代でなんとかしましょう」と、増税も含めた財政再建策を訴えなければいけない。でも、正直に「増税」を訴えたら、この国では選挙民がその人を選ぶことはあり得ないんだ。
実際、僕が都知事選に立候補した時もそうだった。都が抱える問題を調べ、考え抜いた末に「新・東京ビジョン」という政策パッケージを作って発表したけど、有権者もマスコミも、その中身には見向きもしなかった。
そして、「都政から隠し事をなくします」「ちゃぶ台をバーンとひっくり返す」とだけいって自宅に籠もり、選挙運動すらしなかった青島幸男さんが圧勝した。でも結局、青島さんは“都官僚”の言いなりで何もできず、都民から退陣コールを浴びて再選断念に追い込まれたわけだ。
※週刊ポスト2011年4月29日号