2011年の東大合格者ランキング上位の顔ぶれは、例年と比べて大きな変化はなかった。教育ジャーナリストの小林哲夫氏も、「とくに番狂わせはありませんでした」と総括する。
たしかにトップを快走する開成(東京)に、2番手として追走する灘(兵庫)、その後に続く筑波大附駒場、桜蔭、麻布、駒場東邦、東京学芸大学附属などの東京国立・私立勢や、栄光学園・聖光学院の神奈川2強、という構図は今年も不変だった。
しかし、進学校勢力図の中期的な地殻変動の兆しはしっかりと現われている。その一つが名門ラ・サール(鹿児島)の凋落だ。
「ラ・サールはここ10年くらいで東大合格者を大きく減らしています。1980~90年代までは西日本の優秀な生徒がたくさん入学していました。とくに灘に及ばなかった生徒の受け皿になっていたんです。
ところが、私立の中高一貫校がたくさん設立され、西日本の生徒が奪われてしまった。自宅通学よりも寮生活のほうが経済的な負担が大きいため、敬遠されているという理由もあるようです」(小林氏)
「開成・灘・ラ・サール」が東大合格校御三家だった時代も今は昔。1985年には117人合格を記録し、長年70人台以上をキープしていたラ・サールだが、2003年に52人を記録して以降低迷を続け、今年は29人とついに20人台に突入した。往時に比べて1学年の生徒数の減少はあるにしても、この落ち込み方は寂しいものがある。
桐蔭学園(神奈川)の急降下ぶりもラ・サール同様に気になるところだ。1990年代には合格者が100人を超える年もあり、トップ3入りも何度か果たしたが、2000年代に入ると50人の壁を越えられなくなり、ずるずると数を減らして今年は11人にとどまった。
一方、日比谷、西など名門都立の復権がめざましい。両校はここ5年ほどランキング上位での存在感を高めている。
「石原都政の下で2001年度から始まった進学指導重点校制度の効果が出てきたのかもしれません。まだ有名私立ほどの合格者数ではありませんが、今後に期待できます」(小林氏)
なお、都の進学指導重点校は、日比谷、西のほかに、国立、戸山、八王子東、立川、青山の7校が指定されている。公募制による教員配置や、入試での自校作成問題導入など進学実績の向上を目指した制度である。30年前はランキング上位の常連だった名門都立の各校がこぞって復活する日も遠くないかもしれない。
※週刊ポスト2011年4月29日号