国内

避難所の高齢者が亡くなる例も発生 病院からの遠さにも疑問

 地震から1か月。避難所の寒さや衛生状態の悪さから慢性疾患を悪化させて亡くなる「震災関連死」も後を絶たないという。その数、岩手・宮城・福島の3県で約300名に及ぶ。多くが避難所で生活する高齢者だ。テレビ・新聞が報じない“救済なき避難所生活”にジャーナリストの小川善照氏が迫った。同氏が訪問したのは宮城県石巻市中心部から車で20分の場所にある避難所だ。

 * * *
 お年寄りに話を聞くと、余震が頻発するという「現実」に怯える日々はまだまだ続くが、「今後」を意識した不安も頭をもたげるようになってきたという。

 69歳女性は言う。

「千葉の介護老人施設に2か月はまったく無料で入れて、そのあとはアパートに入居できるという話をきいたんだが。どうも信用できねぇ。詐欺が流行っているっていうしよぉ。だってそれを募集している人間は『年金はいくらもらってますか』なんて聞くんだ。オラの年金まで取り上げるつもりか?」

 周囲のスタッフに話を聞くと、この老婆に話を持っていったのはソーシャルワーカーだという。彼らとしても、対象者の収入状況は把握しておかなければならず、不審な調査ではない。

 だが、避難所にも伝わる「震災詐欺」の報道に際して、警戒心を高めている。

 心労は周囲にも伝播する。被災地を巡回している医師は疲れ果てた様子で言う。「福祉避難所の状況はマスコミが報じる以上に酷い。このままだと、震災関連死はまだ増えるでしょう」

 先週、この医師は福祉避難所の当直をしていた。すると、ある70過ぎの男性が苦しい、と呻きだした。しばらくすると呼吸停止の症状を見せ始めた。この医師はすぐに救急車の手配をした。しかし――。

「到着は30分後、その男性は泣き崩れる老妻の脇で口から血を流しながら息を引き取った。男性は透析患者だったらしく、避難所で体調を崩してしまった。なんともやるせない。
 
 県や自治体の措置もおかしいと思う。緊急時に救急病院まで時間がかかる、山間の施設が高齢者たちの福祉避難所というのはなんとかならんでしょうか」

●取材・文/小川善照(ジャーナリスト)

※週刊ポスト2011年4月29日号

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン