4月17日、東京電力は「原発事故収束に6~9か月」などとした福島第一原発処理の「工程表」を発表したが、あまりにもずさんと批判された。
実際の廃炉作業は未曽有の困難が予想される。これほど原子炉が破損した例は過去にチェルノブイリしかない。
チェルノブイリでは、飛び散った核物質を必死にかき集め、原発そのものは「石棺」と呼ばれる巨大なコンクリートで覆った。大量の被曝者を出し、今も石棺の中は大量の放射線で汚染され、そして半径30km圏内が居住禁止になった。
福島はどうなるか。原子力安全工学が専門の近畿大学原子力研究所の伊藤哲夫・所長も「予測が困難」としたうえで、こう語った。
「本当の廃炉作業は、東電がいう『ステップ2』が終わる6~9か月後に始まります。最大の難関で最も重要なのが圧力容器から燃料を取り出す作業で、これは十分に炉内が冷えないと無理なので、早くても4~5年後。しかも燃料が破損して数ミリ以下の粒子状になっているというから、すべて回収できるか疑問があります。できなければ圧力容器そのものにコンクリートを流し込んで完全密閉するしかないかもしれません」
どんなに困難でも燃料はできる限り取り出さなければならない。残せばいつまでもゆっくりと核分裂を続け、その反応で熱を出し、放射線も止まらない。だから「石棺」で覆っても、二次災害を恐れて周囲を居住禁止にするのだ。
※週刊ポスト2011年5月6日・13日号