地球上で「独裁者の施政下」で生きる人は約19億人にものぼるという。そんな国々で、いま何が起こっているのか。ジャーナリストの惠谷治氏が解説する。
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中東各地で激しさを増す民主化要求デモは、アフリカ南部の小さな王国にも飛び火している。去る4月12日、スワジランドで国王ムスワティ3世(43歳)の退任を求めるデモが発生した。
面積が四国ほどで、約120万人が住むスワジランドは、1968年に英保護領から独立した立憲君主国である。しかし、独立後の1972年に行なわれた初の総選挙で、王制支持派が立憲派に圧勝したため、当時の国王ソブーザ2世は、1973年4月12日、憲法を廃止し、王制支持派以外の政党活動を禁止した。
今回は、その日付に因んで、「フェイスブック」でデモが呼びかけられたが、デモ隊は治安部隊のゴム弾や放水で抑え込まれ、100人以上が逮捕された。
18世紀から続く名門ドラミニ家が世襲する王国スワジランドは、1978年に制定された新憲法で国王の絶大な権力が保障され、政府の要職もドラミニ家出身者で占められている。1982年に在位61年を誇ったソブーザ2世が死去すると、王位継承争いが起こったが、1986年4月、18歳のマコセティブ王子が、ムスワティ3世として第8代国王に即位した。
1人あたりの国民総所得が2500ドル(約20万円)にもかかわらず、2010年7月の米誌『フォーブス』が報じた世界の最も裕福な王族の中では、ムスワティ3世の資産は1億ドルとして、15位にランクされている。
ムスワティ3世は2008年に独立40周年と自身の40歳の誕生日(4月19日)を祝う盛大な祝賀パーティを開催した。その費用は250万ドルと公式発表されたが、実際には5倍の1250万ドルが散財されたという。
スワジランドでは伝統的に一夫多妻制が認められており、ムスワティ3世には少なくとも13人の王妃がいる。毎年、13歳以上の処女が胸を露にした伝統衣装を着て参加する「リードダンス」の儀式が行なわれ、国王は参加者の中から気に入った女性を新たな妃にすることが慣例になっている。
妃に選ばれれば、宮殿と運転手付きの高級車が与えられるため、2008年の「リードダンス」の儀式には全国各地から、シンデレラを目指して7万人もの少女たちが集まったという。
※SAPIO2011年5月25日号