東京電力は5月15日、福島第一原発1号機で、地震発生の16時間後にメルトダウンの状態にあったことを初めて認めた。そんななか、“消えた汚染水”について懸念の声があがっている。
これまで、1号機では圧力容器内で溶融した燃料を冷やすために合わせて1万トン以上の注水を行ってきたにもかかわらず、圧力容器や格納容器にたまった水はその半分にも満たなかった。13日に作業員が1号機原子炉建屋地下に水があることを目視で確認したが、その量は約3000トン。残りの汚染水について、東芝で30年にわたり原子炉の設計に従事した吉岡律夫さんがこんな見解を示す。
「汚染水が建屋へ流出し、さらに海に流れていく危険性があります。その場合、燃料に含まれる半減期2万年のプルトニウムなどが海を汚染し続ける。この“海のチェルノブイリ”ともいうべき最悪のシナリオが現実となってしまう。そうならないためには、建屋からの流出を防ぐことに全力をあげるべきです」
1986年に起きたチェルノブイリ原発事故の際には、いまなお原発から半径30キロ圏内での居住が禁止されるほど、土壌が汚染された。海洋汚染はこれまでほとんど例がないだけに、はたして海水、海底のほか、海藻や貝類、甲殻類、魚類といった生態系にどれほどの影響を及ぼすか、予想もつかない。
汚染水についていえば、ここ2週間で建屋地下の水位が20cm以上上昇した3号機でも、建屋やトレンチと呼ばれるトンネルに高濃度汚染水が2万2000トンたまっていると見られる。17日午後からこの汚染水を集中廃棄物処理施設に移送し、水を浄化するシステムをつくり、汚染水を減少させていくという。しかし、それが整備されるまでの道のりはまだ遠い。福島原発の危険はなお現在進行形だ。
※女性セブン2011年6月2日号