東京では震災の復興予算が議論されているが、目下、大阪の話題は「生活保護」である。大阪市では現在、18人に1人が生活保護を受けており、市の予算の約17%を占めている。
それに伴い不正受給も増加しているが、なかでも昨年5~6月にかけて、中国・福建省出身の日本人姉妹の親族とされる中国人48人が相次いで入国し、直後に大阪市へ生活保護を大量申請した問題は、前代未聞の珍事だった。
あれから約1年が経過したこの4月、大阪入国管理局はようやく、「定住者」の在留資格剥奪を決定し、市もこれまでに支給した計644万円の全額返還を求めることになった。
しかし、そもそも疑問なのは、なぜ彼らがあっさり入管を通り、生活保護を受けられたかということだ。この一件は、期せずして行政の問題点を浮き彫りにしてしまったといえよう。
法務省大阪入国管理局総務課が説明する。
「この日本人の老姉妹は、もともと母親が日本人で、福建省から日本に来ていた。彼女たちが親族を日本に呼び寄せたのですが、入管としても、この中国人53人(大阪市以外に居住した5人を含む)を『中国残留邦人』の一族として受け入れることにしたわけです。
書類は整っていたので、受理しました。まさかすぐに、市に生活保護の申請をするなど思ってもいませんでした。後に全員の身元調査をしたところ、書類上では就職するという記述があった会社に問い合わせてみても、会社自体がその話をまったく聞いていないとか、誰のことかわからないとかいうことばかりでした。
また、身元保証人は全員がこの姉妹でしたが、生活の面倒を見てあげられる経済力もなく(姉妹も生活保護を受給)、明らかに不実記載であったということが判明したわけです」
入管としては日本人との血縁関係があるから入国を認めたわけだが、なかには養子もいた。親族というだけで通していいのか。
さらに驚くべきことに、大阪入管が過去5年に遡って調べたところ、入国してから3か月以内に生活保護を申請した中国人のうち8名が、申請書の職業欄に「生活保護」や「無職」、扶養者のところに「区役所」などと書いていたことが発覚した。素直といえば素直だが、なぜそんな無茶苦茶な記載で入国が許可されたのか。
元法務省入国管理局警備官の久保一郎氏は、「中国残留邦人は人権がからむので特に審査が甘い。書類が揃っていれば、確認もろくにしないで自動的に許可していたのでしょう」と打ち明ける。
※週刊ポスト2011年5月27日号