下町職人が作った人工衛星で一躍有名になった浪速の中小企業。この未曾有の災害に際してもその元気は変わらないが、ここにきて再び脚光を浴びている。実は関西企業が日本復興の鍵を握っているからだ。フリーライターの清水典之氏がレポートする。
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納豆の粘りを作る成分をポリグルタミン酸というが、その名を冠した会社が日本ポリグル(大阪市中央区)だ。2002年、5人でスタートしたこの会社は、現在約40人の社員を抱え、納豆の粘り成分やカルシウムなどでできた水の浄化剤を製造販売している。
同社に東京電力から電話がかかってきたのは3月下旬。福島第一原発の建屋内に溜まった汚染水を浄化できないか、との依頼だった。以前、関西電力の汚染水浄化の実験にサンプルを提供したことがあり、関電から東電へ推薦があったという。そこで、浄化剤のサンプルを東電に送る一方で、実際に放射性物質の除去が可能なのか検証を行なった。
同社の小田兼利会長がその時の様子を振り返る。
「放射性物質は入手できないので、通常のヨウ素とセシウムを大阪湾で採取した海水に混ぜ、浄化剤を使ったところ、無色透明になった。東電はフランスのアレバの技術を導入しましたが、浄化技術は弊社とほぼ同じ技術です。アレバは放射性物質の扱いに馴れていますが、我々には凝集沈殿した物質を磁性体で取り出す技術があり、その点では負けていないと自負しています」
同社の技術を東電は採用しなかったが、建屋内の水だけでなく、原発周辺の湖や池も放射性物質で汚染されている。実際、同社には、東日本地域から問い合わせの電話やメールが殺到しているという。
「池や川の水を浄化することで、風評被害をなくし、福島県の農業や酪農を復活させるお手伝いをしたいと考えています」(小田氏)
関西圏ではあまり水質のよくない琵琶湖の水を飲用しているので、水処理関連の企業が多く、その優れた技術に震災復興での活躍が期待されている。
※SAPIO2011年5月25日号