震災を受けて日本では脱原発の議論が高まっているが、それにはコストの議論が不可欠だ。原発のコストはそれでも安いとする宮崎慶次・大阪科学技術センター顧問の主張を紹介する。
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発電所の運転年数が短縮されたり、稼働率が下がったりすれば、原子力に限らず、どの発電方式でも同じようにトータルコストは上がる。
「原子力の発電単価が10~11円」になるのは、古い時代の話であろう。1990年代までは法定減価償却期間に合わせて耐用年数を16年間で計算していた。
現在は、メンテナンス技術の向上などにより、30年以上運転することが可能になっており、コストは下がる。
今回の福島第一原発事故の補償費を含めると、原子力はコスト的な有利さが減じるが、それも小幅に留まるものと思われる。基本的な原子力の経済的優位性は変わらないであろう。
とはいえ、安全最優先が結果的には経済性の向上に繋がることを、電力会社の経営陣はしっかりと受け止めるべきである。
※SAPIO2011年6月15日号