ニュース報道を見ていると「猟奇的殺人」などと表現される身も凍るような事件が時々発生するが、戦後日本で実際にあった世にも恐ろしい残酷な殺人事件を紹介しよう。
* * *
「北の湘南」といわれる北海道伊達市には、昭和恐慌を克服した名蔵相・高橋是清が開設した「高橋牧場」があり、現在も子孫がサラブレッド生産を営んでいる。この農場で昭和26年7月、管理人の夫妻が殺害された。犯人の佐藤栄治(32)は農場の元主任。被害者によって雑役夫に格下げされた後に、解雇されたことを恨んでの犯行だった。
風呂場から被害者宅に侵入した佐藤は、樫の薪で管理人の頭部を一撃し、妻を殴り倒した後で、気絶した2人の頭に五寸釘を打ち込む。それでも管理人が立ち上がってきたので、出刃包丁で肝臓を貫き、妻の喉にも刺身包丁を突き立てるという残忍さだった。
名門農場で起きた惨劇に町は騒然となったが、事件の夜に降った大雨で犯人の足跡が消えてしまったために捜査は難航。佐藤が逮捕されたのは事件から42日目の8月22日だった。
※週刊ポスト2011年6月10日号