県民性から犯罪の傾向は読み取れるのだろうか。犯罪社会学の第一人者である小宮信夫・立正大学教授は「大阪の詐欺犯罪には“大阪人”らしさが垣間見える」と指摘する。
「大阪では『オレオレ詐欺』の被害は非常に少ないのに『還付金詐欺』は多く発生したというので話題になりました。他人にお金を振り込むことには、“ほんまかいな”とツッコミを入れて被害を回避できても、他人からお金を貰えるという話には“すんまへんなァ、おおきに”と、つい油断してしまうのかもしれませんね」
また、優れた統率力を持つ偉人を輩出した都道府県には犯罪が少ないという説もある。
「民心を第一として禁欲的な生活を貫いた上杉謙信の新潟、金銭欲の卑しさや武士道の大切さを説く『獄中教育』を受けた西郷隆盛や大久保利通の鹿児島などが当てはまります。これは未熟な仮説ですが、彼らの時代から脈々と続く文化や、彼らのようになりたいという畏敬の念が、地域の結束力や青少年の向上心といった犯罪防止の要素をもたらしているのかもしれません」
ただし、殺人や強盗などの凶悪犯については、犯罪者の性格や感情、家族環境など「犯罪原因論」の面が大きく影響し、地域性が反映されにくいとされる。
「“A県には殺人が多い”“B県には放火が多い”とはいえません。凶悪犯罪者は確率論的にどこにでも存在します。ただし、『犯罪機会論』に基づく“犯罪が起こりにくい街づくり”は、今後、さらに重要性を増していくと思います」
※週刊ポスト2011年6月10日号