福島第一原発で作業員として働きながら、その実態をリポートするフリーライター・鈴木智彦氏。現場作業員の被曝量はどれほどのものなのか、鈴木氏が初めて福島第一原発の正門前に出向いた後、被曝量測定のために放射線医学研究所に訪れた時の様子をリポートする――。
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汚染検査票を持って放射線医学研究所の建物の奥にある測定スペースに移動した。ここで使っていたのもアロカ社製のGMサーベイメーター(放射能測定装置)だ。男女2人の検査員が、それぞれ2番と10番のテープを貼られたサーベイを手に取り、測定が開始された。
「テープのところにお立ち下さい。バンザイはしなくていいです。自然に手を降ろして下さい。はい行きます。まず10番、バックグラウンド70です。あっ、『気を付け』も駄目です。手は楽にして、普通に下げて」
バックグラウンドとは、自然界を測定したカウント数である。地球上のどこでも、ごくわずかの放射能を帯びているので、これを考慮せずに測定すれば、どんな人間でも被曝していることになってしまう。
鼻、顔、頭頂部、後頭部、喉、両目、胸、背中、腹部、尻、両腕、掌、手の甲、脚、足の裏など、あちこちを測定され、一番高かったのは頭頂部の150カウントだった。バックグラウンドの70を引いても、80カウント被曝している計算だ。知識がほとんどないため、私は一気にテンパった。
「頭頂部が被曝したんですね。ハゲが進むんでしょうか? いや、これはハゲた言い訳にすればいいでしょうね。どっちにしてもハゲ確定ですね」
「ハゲ……ですか。たぶんまったく無関係でしょう」
重苦しいトーンの声を聞いて我に返り、ふと男性係員の頭をみると、彼の頭は私以上にハゲていた。
※週刊ポスト2011年6月17日号