福島原発事故で日本の原子力産業の国際競争力が低下しているが、他国の原子力産業は“意気軒昂”である。とりわけ韓国は低コストを武器に国際市場に参入しつつある。その実態を日本エネルギー経済研究所の村上朋子氏が解説する
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韓国は2009年、アラブ首長国連邦(UAE)における原子力発電所新規建設プロジェクトを落札した。プロジェクト総額は400億ドル。
この落札は、韓国企業の初の海外での落札だったことや、中東産油国における最初の大型原子力案件であったこと、さらには、世界の原子力産業を代表する企業のほとんどが参画していたことから、各方面から注目を集めた。
落札を巡っては、60年の長期運転支援協力を取り付けたことや、裏で軍事協力があったのでないか等、様々な憶測がなされた。
韓国は政府の強力な支援のもとに、官民一体で原子力の国際展開を行なってきたが、UAEプロジェクト落札の主要因は、第1に建設単価の安さだったのではないかと思われる。
韓国の建設単価は1556ドル/kWである。フランスは3860ドル/kW、日本が3009ドル/kWで、日本の半分だ。
韓国プラントの建設コストが低価格である理由は、炉の構造がシンプルなためである。さらに運用実績において、韓国の原発は1974年に導入以来、一度も大事故を起こしていない。
UAEの落札では、韓国の他、日本とフランスも残ったが、コストの低さと運用実績の良さを大いにアピールしたはずだ。
オールコリアで受注獲得をめざす韓国が、日本が最優先交渉権を持つベトナムとの商談をひっくり返そうと動くことは想像に難くない。
※SAPIO2011年6月15日号