福島第一原発の事故を受けて、脱原発に向けた動きが加速している。だが、いざ脱原発に舵を切ってみれば、その先には長期間に渡って莫大な費用を必要とする「脱原発ビジネス」が浮上してくる。見方を変えれば福島第一原発の事故処理はそれ自体が、“巨大ビジネス”なのだ。
作業員派遣業、原子炉解体など様々なカネが動くが、その中でも多額の必要とされたの放射性物質の除去だ。一体どれだけの金が動くのか、ジャーナリスト、伊藤博敏氏がレポートする。
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世界有数の原発メーカーである仏国営企業のアレバのアンヌ・ローベルジョン最高経営責任者(CEO)は、3月31日のサルコジ大統領の訪日と同じタイミングで来日し、廃炉を視野に入れた「事故後ビジネス」を売り込んだ。柔らかな物腰のなかにも意思の強さを漲らせたローベルジョンCEOは、いち早く、高濃度放射性物質による汚染水処理事業の契約を東電と結んだ。
物議をかもしたのは、その契約内容である。4月27日、衆院決算行政監視委員会で、自民党の村上誠一郎代議士が「(放射性物質の除去は)1トンにつき2億円かかるというが、実際にはいくらか」と、質問。
東電役員は「金額はわからない」と答えたが、もしその金額なら25万トンで50兆円。国家予算の1年分にも匹敵する額であり、国民の度肝を抜いた。
反応に驚いた東電は、5月27日、「処理総額531億円」という試算結果を発表、沈静化に躍起となった。
だが、この額だけでは収まらない。アレバが汚染水を処理する「凝集沈殿法」では、汚染水は海水と放射性物質を含む泥に分離されるのだが、531億円のなかには、この高濃度汚染泥の処理費用は含まれていない。
いずれその泥を処理する段階で、また東電はアレバに頼ることになり、相当、高額な請求となりそうだ。つまり処理方法を考えれば、531億円はアレバにとってほんの前払い金に過ぎない可能性が高いのである。
※SAPIO 2011年6月29日号