電力を大量消費する企業の中には、「電力会社の電線を使わなければもっと安くなる」と、自社の敷地内に発電所を造り、そこから工場などの施設に送電しているケースが増えている。
資源エネルギー庁によると、全国の企業の自家発電設備の定格出力合計は6000万kW。この数字は東電1社分とほぼ同規模だ。
JR東日本は川崎火力発電所と信濃川発電所(水力)を保有。同社は東日本大震災後の計画停電を受け、供給量を1時間56万kWhから62万kWhに増強した。
「ラッシュ時の急激な消費電力増に対応するため、両発電所を造りました。現在は電力使用量全体の6割を自家発電で賄っています」(広報部)
新日本製鐵も君津共同発電所(東電との折半出資)を所有している。「弊社は鉄を造る関係で、常時、石炭が大量にあります。その石炭を有効に利用できると考えて発電所を建設しました。君津製鉄所の使用電力の9割は自家発電です」(広報部)
もちろん、自前で発電所を設置するとなれば用地代や建設費などの設備投資に加え、燃料購入やメンテナンスなどのランニングコストがかかる。万が一事故を起こせば、莫大な損害を被るリスクもある。
それでも自社発電所を持つ企業幹部は、「電力会社から電気を買うのはバカバカしい」と語る。
2004年に稼働開始した舞鶴発電所(定格出力180万kW)の建設費は5700億円とされる。これに対して、神戸製鋼所が保有する2002年稼働の神鋼神戸発電所(同140万kW)は2000億円だ(いずれも石炭燃料火力発電)。発電コストの約5割を占める建設費で1kW当たり2.2倍も違うのだから、先の企業幹部の発言は偽らざる本音だろう。
大企業ばかりではない。地下から湧き出る温泉蒸気でタービンを回す地熱発電を導入する霧島国際ホテル(鹿児島県)では、使用電力の約25%を自家発電でカバーしている。
「弊社では1984年に敷地内に地熱発電所を建設しました。5000万円かかりましたが、ほぼ同額の電気料金を5年で削減できた。つまり5年で元が取れたわけです」(営業担当・竹下卓氏)
また、大分・別府温泉の杉乃井ホテルも大規模な地熱発電所(定格出力1900kW)を保有し、使用電力の7割を賄っている。
※週刊ポスト2011年6月24日号