国内

経産省 東京新聞論説副主幹の記事に抗議するも逆襲くらう

大震災と原発事故は、ジャーナリズムのおかしさも露わにした。政府の誤った事故情報をタレ流す。そして、菅政権の情報操作に加担までする。まさに、既存メディア全体が、「原発記者クラブ」と化したのだ。そうした中、ついに内部から批判の声が上がった。ツイッターで「新聞のあり方」に疑問を呈す東京新聞・中日新聞論説副主幹・長谷川幸洋氏とジャーナリスト・上杉隆氏が内外双方向から記者クラブの問題点について語り合った。

* * *
長谷川:この大震災、原発事故からの3か月で、世の中の受けとめ方が実は相当、変わったと思う。どういうことかというと、原発の放射能漏れなんかについて、政府のいっていること、東電のいっていることがウソじゃないかと、普通の人がみんな気がついちゃった。放射線量一つとっても、みんな疑いの目でマスコミを見始めたわけです。だから、僕の経産省オフレコ問題も話題になった。

上杉:ツイッターでも反響を呼んでましたね。

長谷川:あれは、5月13日に細野哲弘・資源エネルギー庁長官が、論説委員懇談会っていうのを開いて、20人か30人かいたと思うけど、そのときにやりとりがあったわけですよ。僕はあまり論説委員懇談会って出ないんだけど、そのときは行ってみたわけ。そうしたら、その日の午前中に、枝野官房長官が原発事故の賠償枠組みについて、「(銀行の債権放棄がなければ)国民の理解はとうてい得られない」と語ったことが話題になったんです。

細野さんは、「これはオフレコですが」って前置きして、「いまさらそんなことをいうなら、これまでの私たちの苦労は何だったのか」と発言した。細野さんとしたら東電を守りたいわけだから、正直な発言だなと思って、ウェブサイトの『現代ビジネス』に書いたんです。そしたら、反響があって、経産省の広報室長が私の上司、論説主幹のところに電話で抗議してきた。で、今度はその抗議の経緯を書いた。そうしたら次は経産省記者クラブの東京新聞記者を懇談出入り禁止処分にしてきたから、それもまた書いちゃった。

上杉:素敵ですね。長谷川さんの話を聞いてると、自分自身、10年前に戻った気がします(笑い)。NYタイムズはいつもそうだったんですよ、全部。海外のメディアは、圧力がかかっても全部書いちゃうんです。そしたら、圧力はかけられなくなりますよ。これを1970年代、1980年代からずうっとやってきてるから、海外の新聞は圧力に屈しない体質になった。

長谷川:多分、そこがポイントで、僕はこれは日本の新聞メディアではまだできないと思う、はっきりいって。東京新聞でもできないと思う。組織メディアって難しいんですよ。つまり、上司がいるでしょう。それから、同僚がいるでしょう。今回まさに起きたことがそうなんだけど、まず、上司に文句をいうでしょう。で、同僚を出入り禁止にする。組織の上と横とから、要するにじわじわと真綿で首を絞めるように圧力をかけてくる。それで、私には一切接触はないんだから。

上杉:できるできないではなく、やるかやらないかの問題ですね。まあ、ジャーナリストが会社員というのは日本だけの特徴ですけど……。NYタイムズだって、社員の記者なんて一人もいないんですよ。メジャー選手みたいに、年俸制の契約関係なんですよ、全部。

※週刊ポスト2011年7月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン