福島原発で原子力発電への疑問符は世界中に広がった。ガスへの脚光は世界的な潮流でもある。
いち早く表明したドイツやスイスに続き、国民投票で反対票が9割を超えたイタリアなど、「脱原発」の動きが世界的に高まっている。その動きと前後する格好で、国際エネルギー機関(IEA)は6月6日、世界が「ガス黄金時代」を迎えたとするレポートを発表した。
それによると、世界の天然ガスの需要はエネルギー全体の約2倍の勢いで伸び、2035年には2008年と比べて62%増加するとされている。今後は原子力はもちろん、原油に取って代わる「エネルギーの主役」としてガスに対する注目度が高まっているのだ。
エネルギー産業に詳しい一橋大学大学院商学研究科の橘川武郎教授が語る。
「特に米国では、はがれやすい岩石層を採掘して生産する『シェールガス』という膨大な量の非在来型ガスの存在が明らかとなり、2009年には米国がロシアを抜いて世界最大の産ガス国となるシェールガス革命が起きました。かつては『原子力ルネッサンス』と繰り返し説いていたオバマ大統領も、今年3月以降はガスこそクリーンエネルギーといって憚らないほど。いまや世界のエネルギー政策の最前線では、天然ガスの争奪戦が繰り広げられています」
※週刊ポスト2011年7月1日号