脱原発の声が世界的に高まっているが、日本のエネルギー政策はどうあるべきか。政策を担う首相が何を目指しているか全く伝わってこないと獨協大学教授の森永卓郎氏は指摘する。
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菅直人首相は、5月のG8サミットで「2020年代の早い時期に自然エネルギーを20%以上に増やす」と宣言した。 もし10年やそこらで20%にまで増やせば、電気代は跳ね上がり、間違いなく日本経済は崩壊する。
鳩山由紀夫氏の「CO2の25%削減宣言」と同じで単なる思いつきだろうが、エネルギー政策というのは国のかたちを決める極めて重要な問題だ。この宣言はどれほどエネルギー問題を軽く考えているかの証明である。
その一方で、菅首相は原発を継続利用するとも発言している。脱原発なのか、原発推進なのかさっぱりわからない。
私は「脱原発」という選択は十分ありうると思うが、それは代替電源を確保したうえで、老朽化した原発から順次廃炉にしていくというやり方しかなく、何十年もかかる作業である。
作った原発は使い切るべきで、たった1年でなし崩し的に止めるというやり方は絶対にありえない。 今、原発のスイッチを入れなければ、大規模停電のリスクも高まる。世間に蔓延している過度な反原発の空気を静める責任が首相にはある。
※SAPIO 2011年6月29日号