福島第一原発事故に伴う放射能漏れについて、“煽り派メディア”はガイガーカウンター片手に被災地や東京都内を走り回り、「高い値が出た」「ここが危ない」と大騒ぎだ。
しかし、相変わらず無知と不勉強が多すぎる。
住民の不安を煽る「放射能コワイ報道」の責任は重い。問題の最たるものは、彼らがいまだに自然放射線の存在を意図的に無視しているか、全く無知であることだ。
その種の記事に必ず出てくる大誤報は、政府が決めた被曝限度量を「通常は年間1ミリシーベルトなのに20倍に引き上げた」と批判するフレーズである。
「通常は1ミリ」というのはICRP(国際放射線防護委員会)の基準だが、そんなに放射能の記事が書きたいなら、記者は一度くらい原典を読んでみるべきだろう。
基準は、「自然放射線と医療放射線を除いて1ミリ以下」と定められており、「総被曝量を年間1ミリシーベルト以下にせよ」などという文言はどこにもない。
世界の自然放射線は平均で年間2.4ミリシーベルト、医療放射線被曝は平均0.6。日本では自然放射線が平均1.4、医療放射線が平均2.3ほどだ。
つまり、たとえ核実験や原発事故がなくても、人類は世界平均で年間3ミリシーベルト、日本人は3.7ミリシーベルト被曝している。これとは別に「年間1ミリシーベルト」が許容されるというのがICRPの基準なので、少なくとも「年間4ミリシーベルトまでは安全」という意味なのである。
ちなみに、ICRPは基準づくりにおいて自然放射線の特に多い地域(最大で年間10ミリ程度)も考慮しているから、実際には「年間4ミリ」よりもっと多い被曝量でも安全であると判断していることになる。
入り口から「被曝限度」を間違えているのだから、“煽り派”の議論は滅茶苦茶なのだ。
※週刊ポスト2011年7月8日号