中国の物価上昇が止まらない。今年5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比5.5%の上昇と2年10か月ぶりの高い伸びを記録。加速するインフレによって中国経済の先行きを危ぶむ声も高まっている。
中国の物価を大きく押し上げているのは食料品と家賃などの居住関連とされているが、なかでも「豚肉」の高騰が中国経済全体に大きな影響を与えているというのは、中国経済に詳しいTS・チャイナ・リサーチ代表の田代尚機氏だ。
「5月の豚肉価格は40.4%も上昇しており、CPI全体への寄与率は20%近くに上ります」
物価上昇全体の2割近くを豚肉価格が引っ張っていること自体驚きだが、そもそもなぜこんなに豚肉の価格ばかりが跳ね上がっているのか。
「遡れば、2008年の春先に豚の耳が腐るような病気が蔓延し、大量処分されたために供給不足に陥り、豚肉価格が急騰しました。これを儲かる商売と見て養豚業者が急増し、一気に供給が増えたのですが、今度は豚が増えすぎたために翌2009年は急落。しかも養豚業者にとってみれば“泣きっ面に蜂”というか、飼育に必要なエネルギー価格や飼料となる穀物価格が急騰するなど生産コストが上昇したために、養豚は儲からない商売となってしまい、多くの養豚業者が去ってしまったのです。ところが、今年春先には子豚の間で病気が流行し、供給が細る中、業者による買い占めや売り惜しみなどが相次いで、再び急騰しているわけです」(田代氏)
豚肉価格が高騰すれば皆が養豚に殺到し、価格が下がれば去っていく――。なんとも現金な話だが、今後の展開として田代氏は、「再び養豚業者が増加することで、豚肉価格も落ち着いてくるのではないでしょうか」と予測する。ともあれ、豚が中国経済の成長にブレーキをかけているとは、まさにトンでもない話である。