東日本大震災の復興財源をどうするかで、早くも増税議論が出ている。 国民には、マニフェスト撤回や大増税をしなければ復興予算がないように説明しながら、実は、財務省は、すぐに使える「復興財源」を隠し持っている。
国債の償還を行なう「国債整理基金」特別会計には、平成21年度決算で20.7兆円の剰余金が出た。
このうち8.1兆円は翌年度の国債償還の費用にあてられるが、残る12.5兆円は「減債基金」と呼ばれ、同省の資料(平成21年度特別会計決算概要)によると、「年度中の不測の事態に備え、基金残高について歳出権を付与しているものの、そうした事態が生じなかったため、歳出しなかったもの」と説明されている。
つまり、この基金は、すぐに国債償還に使う予定がなく、不測の事態が起きたときのために、政府に「歳出権」が与えられている。財務省の「隠しガネ」なのである。直近の平成22年度末では基金残高が13兆4000億円もある。
この資金を使えば、高速割引や子ども手当の廃止、大増税をしなくても、10兆円ともいわれる補正予算の財源はまかなえるはずだ。
民主党「増税によらない復興財源を考える会」呼びかけ人の川内博史・代議士は、特別会計を所管する財務省主計局司計課の担当者を呼んで質した。
その時のやりとりはこんなものだったという。
川内代議士「資料に書かれている不測の事態とは何を想定しているのか」
財務省「天変地異などのことです」
川内代議士「東日本大震災はまさに天変地異。基金は使えるはずだ」
財務省「いえいえ、先生。東京で首都直下型の大地震が発生し、財務省の庁舎が倒壊しているような事態のことなんです」
この役所は、“東北がやられたくらいで使えるか”といってのけたのである。
「首都直下型地震の時に使うという定めは法律のどこにもない。この財源を温存したまま増税したい財務省の言い訳です。歳出権がすでに与えられているのだから、政府の判断で復興財源に使うことができるはずだ」(川内氏)
菅政権は、この財源を隠して復興構想会議などいくつも審議会をつくり、増税方針をまとめるまでわざと復興予算の編成を遅らせた。被災者、国民のことなど全く眼中にないことがわかる。
※週刊ポスト2011年7月8日号