節電ムードが高まり、もはや電気を使うことが「悪」という状態にもなっているが、独立行政法人・産業技術総合研究所(産総研)が節電効果に関するシミュレーション調査を行なったところ、驚くべき結果が出た。
産総研の安全科学研究部門は、計画停電の影響やさまざまな節電の効果をシミュレーションで効果測定し、「夏季における計画停電の影響と空調節電対策の効果」というレポートを6月21日に公表している。
レポートでまず驚くのは、昔ながらの「打ち水」には節電効果がないと指摘している点だ。各地で打ち水イベントなども行なわれているが、逆に電力需要を増やすと試算されたのである。
産総研・安全科学研究部門の研究員、井原智彦氏は、メカニズムをこう説明する。
「シミュレーションでは、13時の打ち水を想定していています。打ち水をすると気温は0.5度下がりますが、日照が強い昼間は、水がどんどん蒸発して外気の湿度が上がります。換気で外気が室内に入ると、エアコンにとっては0.5度の下降効果より、湿度上昇による負荷の増大が大きいので、かえって電力消費を増やす。
打ち水は日中の暑い時間帯ではなく、日照の弱い朝夕にしないと節電効果はありません」
しかし、朝夕の節電に効果があっても、電力消費がピークの日中の時間帯に節電できなければ、あまり意味がないのではないか。
※週刊ポスト2011年7月15日号