総務省と新聞・テレビ局が地デジ化を強行する理由の1つに、キー局・ローカル局の民放ネットワーク網の維持がある。テレビ局の免許は、1988年に告示された郵政省の放送普及基本計画によって原則「県域免許」(※下記参照)とされた。そのため、各都道府県に配置されているローカル局はそれぞれ在京キー局の系列下となるピラミッド構造ができあがった。これが巨大な既得権益の温床となる。地方局幹部がカラクリをこう話す。
「まず在京のキー局でいえば、東京で作った番組を地方で独占放送すれば、スポンサードネット(番組自体ではなく、全国ネット放送という枠でCMを募る手法)によって巨額の広告収入が得られます。
NHKを除き、地上波は新聞社資本の入ったキー局5社でほぼ独占しているため競争相手もいない。最近はネットによる攻勢で値下げが起きているものの、現在でも広告料はキー局の言い値に近い。
地方局は自前で制作費をかけて番組を作らずにキー局のゴールデンタイムの人気番組を流せる。地方ではキー局制作の番組は視聴率が高いので、それで広告費を稼げる」
この地域独占体制こそが、全国128局で3兆円近い売上高と、キー局社員の高給を支えてきたのである。
※県域免許/テレビ放送のための電波使用の免許は、関東・中京・阪神の各広域圏を除き、原則として県単位で交付される。1957年に田中角栄・郵政大臣がNHK7局、民放36局に免許を与えた時に確立され、1988年の放送普及基本計画で定められた。
※週刊ポスト2011年7月15日号