東日本大震災による福島第一原発の事故は、日本のみならず世界中に放射能汚染への恐怖を植え付けた。ドイツでは政府がいち早く2020年までの「脱原発」を決め、日本でも菅直人首相が先のサミットで、
「2020年代に全電力に占める風力や太陽光発電など、再生可能エネルギーの割合を20%超にまで高める」
との方針を打ち出した。震災前までの日本における原発の発電量は全体の29%。菅首相の発言は、脱原発を宣言したに等しい。
だが、前途は多難だ。
各電力会社は経済産業省OBを中心に、過去、多くの天下りを受け入れてきた。また、電力会社役員や関連団体は、政治家たちに長く献金を続けてきている。電力をめぐる政官業の癒着が、菅首相の「脱原発」方針の前に大きく立ちはだかり、現在の政治の混乱の大きな要因にもなっている。
もちろん、再生可能エネルギーによる発電技術の開発にも、多くの時間が必要だ。東京大学名誉教授の安井至さんが語る。
「太陽光や風力発電などのエネルギーは気候条件に左右されやすく、発電量が不安定です。原発に代わって3割の発電量を担うことは期待できません。最も有力といわれる地熱発電を実用化できたとしても、数%にとどまるでしょう。エネルギー問題に即効薬はない。20年後までのロードマップをつくり、じっくり見直していく必要があります」
現在、原発は国内に54基。福島第一原発に定期点検中のものを加えると、現在はそのうち35基が稼働を停止している。定期点検を終えた原発に関しては、一部立地自治体に再稼働を認める動きはあるものの、世論は依然、再稼働に批判的だ。
環境エネルギー政策研究所の松原弘直さんによれば、
「たとえすべての原発を止めても、火力発電や水力発電をフルに使い、企業や家庭がよりいっそうの節電に努めれば、電力が不足する事態は避けることができます」
と話す。いずれにしても原発に頼らない道を選ぶとすれば、今後少なくとも数年間、場合によっては10年以上にわたって、節電は避けて通れぬ道ということになる。
単純化していえば、日本はいま、原発をとるか、節電をとるかの二者択一を迫られているとさえいえるのだ。
※女性セブン2011年7月21日号