7月1日、党創建90周年を迎えても、一党独裁政権は頑なに人権弾圧を続ける。そして国際社会は中国の人権問題に口をつぐんだままだ。米国民主党のオバマ政権ですら、腰が引けてしまっている。そんな中、米議会では超党派がここ数年悪化する中国の人権弾圧、特に言論や信仰の自由に対する弾圧に対して、非難の声をあげている。米国下院議員で中国問題議員団共同議長のランディ・フォーブス氏(共和党)が知られざる弾圧の惨状を語る。
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今年1月、オバマ政権は中国の胡錦濤国家主席の公式訪問を、文字通り「レッド・カーペット」を敷いて最高待遇で出迎えた。世界最大の民主主義国家の指導者が、世界最大の共産主義国家の指導者と乾杯を交わしたのである。しかし、一体、何に乾杯したのだろうか。オバマ大統領はぜいたくな歓迎式典を開くよりも、毅然とした態度で人権や通商問題などに関する真剣な議論を求めるべきだったのではないか。
オバマ政権は人権などの微妙な問題を強く批判すれば、中国を怒らせるのではないかと死ぬほど恐れているのだ。中国は米国債の最大の保有国であり、自分の「銀行」に対して強硬な姿勢を取るのは難しいのであろう。
しかし、ベイナー下院議長(共和党)はオバマ大統領主催の公式夕食会を欠席し、後に個別に胡主席と面会して中国政府による人権侵害への強い懸念を伝えた。
中国の人権弾圧はこの10年でさらに激しくなっている。とりわけ、昨年末に始まった中東諸国における民主化運動「アラブの春」や胡錦濤主席の訪米以降、中国政府は反体制派や宗教団体に対して1989年の天安門事件以来、最も激しい言論弾圧を加えている。何千という中国の市民が、自身の信仰や信念を表現したり、または中国共産党の政策に疑問を呈したという理由で拘束されているのだ。
今年4月には、公共の場で祈りを捧げようとしただけの平和的なキリスト教徒たちが、警察によって車に押し込まれ連行された。さらに、中国共産党に対して批判的な人権活動家として知られる芸術家の艾未未氏が、北京国際空港で香港行きの飛行機に乗ろうとしていたところを公安当局に拘束された。
自宅は捜索され、パソコンなどが持ち去られた。7万人のネットユーザーが追いかける艾氏の人気ブログも封鎖された。当局は経済犯罪の容疑であることを明らかにしたが、艾氏の「言論封じ」とみられている。その他、ノーベル平和賞を受賞した民主活動家、劉暁波氏の投獄など、多数の著名な人権活動家が拘束され、消息がわからないままだ。
一方で、当局の意向に沿わない案件を扱う弁護士が資格剥奪や抑圧を受けている。中国で最も著名な人権派弁護士の1人である「盲目の人権活動家」陳光誠氏は、昨年、4年余りの刑期を終えて釈放されたが、現在も自宅軟禁状態にある。
米人権団体「チャイナ・エイド」が入手した陳氏の妻からの書簡などによると、共産党当局者らは陳氏を拘束する際に気絶するまで拷問を加え、妻も毛布にくるまれて地面に転がされ、執拗に蹴られるなどの暴行を受けたという。今年2月には、軟禁中の夫妻が当局者によって激しく殴打され、ベッドから起き上がれない状況であることが判明している。
また4月末には、国際的にも著名な人権派弁護士、李方平氏が失踪、行方不明となっている。李氏は粉ミルク汚染事件の被害者家族の弁護や、前述の陳光誠氏の支援など人権保護の立場から幅広く活動していた人物である。
法輪功の弁護士も相次いで資格を剥奪され、さらには、政府への陳情者まで「裏監獄」と呼ばれる施設で、非合法な長期拘束や暴行が行なわれているという報告もある。
※SAPIO 2011年7月20日号