若者のクルマ離れが深刻化している。自動車評論家の徳大寺有恒氏は、「経済の悪化でイニシャル、ランニングコストともかかるクルマなんて買えない、都会の移動手段なら電車や地下鉄のほうが便利……どれも的を射ていると思う」としたうえで、クルマ離れの理由をこう分析する。
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クルマ離れの最大の理由は、魅力のあるクルマがうんと少なくなってしまったからだよ。セクシーじゃないクルマから、若者が離れていくのは当然のことなんだ。
日本車ってのは、欧米の先進カーを研究して、徹底的にコストを下げ、そこそこ高い品質で勝負してきた。だけど、愛着のある一台を作ってきたかというと、これは大いに疑問だ。
基本コンセプトからスタイリングを含めたデザイン、機械としてのクルマの手触り、音、ドライブフィールというものを、蔑ろにしたまま今日に至ってしまった。そんなクルマに愛着なんて持てるわけがない。
ポルシェが愛されるのは、ステータス性はもちろんだけど、やっぱり機械としてのフィーリングや性能の高さなんだ。BMWの開発者が、「ポルシェくらいブレーキにコストをかけられたら、俺も幸せになれる」なんてことをいってた。あのBMWをして羨ましがらせるくらい、ポルシェは独自の主張をしているんだよ。
それに、今どき車検が来たらすぐに買い替えるユーザーは少数派になった。たいていは10年近く乗る。こうなると、いっそうボディ・スタイルやエンジンの優劣がクルマ選びの指標になってくる。欧州勢の新車、とりわけ小型車を見ると、このことをよく理解していると感心するね。
アウディA1は1.4Lターボエンジンで122馬力を出すし、新フィアット500は燃費のいい2気筒エンジンを積んだ。アルファロメオにも1.4Lターボのミトがある。燃費がよくって高性能、おまけにスタイリッシュとくれば、10年の愛着に耐えられるってもんじゃないか。
※週刊ポスト2011年7月15日号