ジャーナリスト・武冨薫氏の司会&レポートによる本誌伝統企画「覆面官僚座談会」。呼びかけに応えた官僚(経産省ベテランA氏、財務省中堅B氏、総務省ベテランC氏)が、「脱原発」について仰天の証言をする。
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――菅首相は、玄海原発の再稼働問題でも土壇場で逃げ、急に「ストレステストをやる」と言い出した。
総務C:経産省は松永和夫・次官以下、全省あげて九州電力の玄海原発の再稼働を働きかけ、地元の賛成を得て、県知事の同意を取り付ける寸前までいった。あとは総理が知事と会談し、安全を保証するセレモニーだけになっていたのに、総理は会おうとしなかった。
経産A:いいたいことはいろいろあるが、今の上層部が原発再稼働を優先課題にしていることは認めます。望月晴文・前次官と松永次官のラインはエネルギー畑の出身で東電、電力業界と親密だ。省内には10年前のトラウマも残っている。
――トラウマとは?
経産A:1999年頃、省内で電力自由化を進めるべきだという改革論が勢いを持った。それに対して東電は政治力を使って反撃してきた。わが省は財界を味方につけている時は政治力を発揮できるが、そうでないと脆い。最後は改革派が総崩れになった。その後の東電の報復はすさまじかった。自由化推進派だった部長は、将来の長官ポストが約束されていたのに、局長を1年やっただけで退官に追い込まれた。その部下も地方に飛ばされた。時の次官は改革派と見られていたが、最後は白旗を揚げて、「改革はいいが、命あってのものだ。自分の身は自分で守れ」と言い残して天下った。これで電力改革を唱える官僚はほとんど消えて、出世したのは自由化反対派ばかりだ。
財務B:経産省も被害者ってこと? やっぱり悪の黒幕は東電だと?
経産A:そこまではいわないが、わが省内でも不満や異論はあるということ。
※週刊ポスト2011年7月22・29日号