連日のように放射能の不安が各種メディアによって伝えられているが、必要以上に煽ることはいかがなものか。その結果、子供を持つ母親や出産を考える女性たちは、放射能への恐怖と不安に怯え、一部にはノイローゼに近い症状の人々も出てきている。これももう一つの報道被害である。
「大阪在住の30代夫婦の話です。4月からシンクタンクに勤める旦那さんの転勤で夫婦そろって東京に移り住むはずだったんですが、原発事故の影響で専業主婦の奥さんが放射能を怖がって、東京行きを拒んだんです。元々夫婦仲があまり良くなかったことから、別居するぐらいなら離婚しようということで、二人は4月末に離婚してしまいました」(離婚式プランナーの寺井広樹氏)
放射能がきっかけで離婚とは尋常ではないが、いまやそれも特殊な例とは思えないほどに、家族にとって放射能は大きな問題になっている。
通信会社に勤務する31歳のキャリア女性は、今月末に結婚式をする予定だが、ある決意を固めている。
「年齢的に、本来なら結婚したらすぐ子供を作るつもりでしたが、東京電力の出した工程表のステップ2が終わるまでは、控えるつもりでいます」
彼女曰く、ステップ2が終われば、放射性物質の放出が管理され、線量が大幅に抑えられるので、ある程度は安心できるのだそうだ。
さらに放射能を心配するあまり、子づくり延期に止まらず、放射能を理由に中絶を考える女性まで現われた。「専門家が答える暮らしの放射線Q&A」というサイトには、「東京都在住です。最近妊娠が判明しました。現在6週目くらいだと思います。原発事故による被曝が心配で中絶を考えてしまいます」という相談が寄せられている。
福島県内の産婦人科医は、こう案じる。
「いまの放射線量なら心配ないのに、不安を感じている妊婦さんがいます。お子さんの将来のことを考えると心配になるのでしょうが、そういう方には、大丈夫ですよとアドバイスしています」
子づくり延期や中絶などによって出生率の低下さえ懸念されている状況だ。
※週刊ポスト2011年7月22・29日号