心臓に異常はなく、心筋細胞を動かす電気系統の遺伝子異常で起こるのがブルガダ症候群だ。心電図に特徴的な波形を示し、心室細動により突然死に至ることもある。30~40代の男性に多く発症し、現在では、「ぽっくり病」の主な原因だと考えられている。
心電図の波形がブルガダ様でも全員が心室細動を起こすわけではなく、リスクの高い場合は植え込み型除細動器で突然死を予防する。
ブルガダ症候群の症例が報告されたのは1992年で、報告者の名前を取って病名が付けられた。この病気は心臓そのものには異常はないが、心筋細胞の電気系統の遺伝子に異常があって心室細動を起こし、失神や突然死を招く。
心電図は12か所からの誘導で波形をとるが、ブルガダ症候群はV1~V3誘導でST部分が上昇するという特徴的な波形を示し、日本人を含めたアジア人に多く見られる。30~40代の働き盛りの男性が就寝中に突然死する「ぽっくり病」は長くその原因が不明だったが、現在ではブルガダ症候群が主な原因と考えられている。東邦大学医療センター大橋病院副院長で、循環器内科の杉薫教授に話を聞いた。
「心臓は筋肉の塊で、中に特殊な伝導系があり、細胞の内外をナトリウムやカリウム、カルシウムイオンが出入りしています。その際プラスイオンとマイナスイオンが移動を繰り返して電気の流れを作り、その後に心筋が収縮します。
この病気は、主にナトリウムチャネルの遺伝子異常があるために、心電図で特徴的なブルガダ様変化を示すと考えられます」
会社などで実施する定期健康診断で心電図をとると、ブルガダ様の特徴的波形を示す人は1000人に6人程度いるが、外見上は健康で社会生活も普通に送っており、突然死を起こすとは思えない。しかし、基質としては持っており、その中から心室細動を起こすリスクの高い人を識別診断する必要がある。(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2011年7月15日号