7月24日の地デジ化強行の裏には、民放テレビ局の全国ネットワーク網の維持という目的がある。地上波の独占を保てば、くだらない番組でも競争相手がいないから、広告主が付く。地デジ化は、テレビ局がオイシイ商売をこれからも続けていくことを保証してくれるのだ。
一方、政治家や霞が関が地デジ化にこだわる理由は何か。いまやテレビが“権力の監視機関”などとは誰も考えていないだろうが、テレビと権力の結びつきは深い。NHKを含め全国に128あるテレビ局のうち、3分の1に当たる約40社の主要株主を占めるのが地元自治体だ。
「地方ローカル局が定期的に知事の対談番組を流すのも、自局の“大株主”だから当たり前。多いところでは、年間5億円程度の税金を投入して、自治体の広報ニュースを流している。
そもそも地方局は、自治体と地元の権力者や有力企業がカネを出し合ってできたものだから、行政や企業と協賛という形で催事を行ない、互いに利益を分け合うのは日常茶飯事です」(関西のローカル局幹部)
地方と中央の利権の橋渡しを行なうのが政治家だ。地元選出の国会議員がお国入りした際、ローカル局が大きく取り上げるのも、ギブ・アンド・テイクの関係があるからだ。「公共事業の誘致などによって、地元の有力者や企業が潤うから、宣伝を承知で報じている」(同前)という。議員にとっては次の選挙に向けて絶好の票集めになる。
そしてテレビ局は郵政・総務官僚の有力な天下り先だった。フジテレビやテレビユー福島の社長に旧郵政省の事務次官が就任し、北海道テレビ放送の元取締役に北陸電波監理局長、鹿児島放送の元常務に四国電波監理局長出身者が就いていた例など、挙げればキリがない。
政治と官僚、テレビネットワークは、利権の分配という関係で固く結ばれている。テレビ局が謳う“公正中立”“権力からの独立”など嘘八百である。
※週刊ポスト2011年7月22・29日号