お上が発表した数字は信用ならないとばかりに、自ら計測を行なう報道機関が増えている。結果、「全国○○か所調査」と銘打ち、放射線の人体への影響を表す「シーベルト」すら測れない機材で計測された数値が公表され続ける。本誌・週刊ポストでは、過去に安物のガイガーカウンターの信用性について疑問を投げかけたが、このたび性能の高い(当然値段も高い)シンチレーションカウンター(検出器)と安物の計測値を比較してみた。
測定に使用したのは、シーベルトも測れるシンチレーションカウンターの『日立アロカメディカル製TCS-151』で、価格は約50万円。これで、東京都内の40公園、関東沿岸の7海水浴場で空間放射線量を計測した。
現在、国が発表している保育園や幼稚園、学校活動での放射線量の安全基準は、1時間あたり3.8マイクロシーベルト。国が福島第一原発から半径20キロ以上離れた自治体の住民に避難を求める「計画的避難区域」を設定した際の目安「1年間の累積被曝量が20ミリシーベルト」を1時間あたりの値に換算した数値だ。
結論からいえば、今回の計測では、すべての地点がその基準値を下回っていた。
最近では独自にこの基準を下げる自治体が出てきており、千葉県野田市では0.19という上限値を設定している。しかし、ほとんどの地点がこの基準値もクリアしている。
ただし同じ公園でも放射線量にバラつきがあり、「最も高かった場所」では0.19を上回る地点もあったが、「いずれも排水溝付近など、放射性物質を含んだ雨水が染みこんだ泥が溜まった場所。それでも子供がその泥を大量に口にしたりしないかぎり、心配いらない数値です」(医学博士で、首都大学東京・健康福祉学部放射線学科の加藤洋准教授)
また、秋葉原で購入したガイガーカウンター(5万円)でも同じ場所を計測したが、何度やっても2倍以上の数値が出る場所が多かった。
例えばシンチレーションで0.12マイクロシーベルト(以下単位同)を計測した赤塚公園バーベキュー広場では手持ちのガイガーカウンターは0.28を表示。0.06の飛鳥山公園の滑り台下でもガイガーカウンターでは0.21を示した。
とにかく計るたびに数値がコロコロ変わることも少なくなく、これを現実の放射線量と信じてしまう人が多いのかと思うとゾッとする。
※週刊ポスト2011年7月22・29日号