中東・北アフリカの独裁体制を転覆させた「ソーシャル・メディア」による民主化革命。だが、この革命の裏には、大国・米国の巧妙な戦略が見え隠れすると言う。原田武夫国際戦略情報研究所の原田武夫氏が解説する。
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2009年5月にはオバマ大統領がサイバー空間は「戦略的な国家資産」と定義付け、昨年7月には中国やロシアなどとサイバー空間の軍事攻撃を減らす意向を国際約束の形で取り付けた。
そのように“縛り”をかける一方で、2010年6月22日には、米空軍がこんな入札公告をネット上にひっそりと公開していたのだ。
それが「ペルソナ・マネジメント・ソフトウェア」という、「1ユーザー当たり10名のペルソナ(人格)をつくり出せるソフト」の開発者を募集するものだった。
たとえばツイッターなどはいくつもアカウントを取得すれば複数の人間になりすますことはできるが、実名顔出しが原則のフェイスブックでそれをやってのけるのは至難の業に思える。
俄かには信じ難いかもしれないが、実際に米空軍は「ニセの人格をインターネット上でつくり出すためのソフトウェア」の開発に踏み切っていたのである。
この「なりすましソフト」を駆使すれば、何人もの架空の人物をソーシャル・メディア上にでっち上げ、彼らが言葉巧みにデモを呼びかけることが可能となる。あとはそれを見たネットユーザーが次々と賛同することで、まんまと世論が形成され、民衆蜂起につながっていくのである。
そして、そのような世論操作を有効にするためには民主主義であることが前提となる。もうおわかりいただけるだろう。このようにしてアメリカはサイバー空間を意のままに操れる“情報兵器”をつくり上げ、中東・北アフリカはもちろん、知らぬ間に世界中に広げようとしているのだ。
※SAPIO 2011年7月20日号