ガイガーカウンター片手に母親が公園や学校の放射能の値を測る光景はテレビ等でおなじみとなっているが、原発や放射能に怯えるママがいれば、その不安につけ込み、一儲けしようと目論むものたちが出てくる。ノンフィクションライターの窪田順生氏がレポートする。
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「薬事法のからみで公表してませんが、実はこの水には放射能を分解する力があるんです。ハーバード大学の研究チームや放射線医療の専門家もその効果は認めています」
そんな謳い文句で、主婦層を中心に清涼飲料水「A」のセールスがかけられている。1本1リットル弱のボトルが12本で2万1000円也。
放射能って分解できるんかい、などツッコミどころが満載のこの「奇跡の水」について、健康食品業界紙記者が失笑しつつ説明してくれた。
「老舗マルチ商法業者が扱っている主力商品で、数種類の酢が含まれたものです。“水もの”では業界でも一、二を争ういかがわしさで、ガンやアトピーに効くと公言していますが、まさか放射能まで手を広げてくるとは思いませんでしたよ」
しかし、そんな怪しげな水にもかかわらず、放射能に怯えるママたちは藁をもつかむ勢いで飛びつくようで、ネットには「娘に大量に今飲ませてます!」などの声が寄せられている。
「子供のいるお母さんたちは今ちょっとしたノイローゼになっています。数十万円のガイガーカウンターを購入して食材をすべて測らないと気が済まない人や、小学校の砂場の放射線量測定を自腹で業者に頼む人もいます」(全国紙記者)
こうした“原発ノイローゼママ”の不安につけこむ「放射能詐欺」が横行している。国民生活センターが把握している放射能便乗商法も震災後2か月で1400件を突破。そのなかで、すでに「詐欺」として報道されているものには「給湯器に放射線が溜まって危険だ。清掃しないといけない」などという勧誘・販売や、放射性物質を体外に排出するというふれこみの健康飲料水「プレミアムゼオライト」などがある。
※週刊ポスト2011年7月22・29日号