ようやく国会審議がスタートした原子力損害賠償支援機構法案だが、現時点ではその成立の見通しがほとんど立っていないのが実情だ。東電と並んで、その審議の行方を固唾を呑んで見守っているのが、他ならぬ東電の取引銀行団だ。ジャーナリストの須田慎一郎氏が解説する。
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「もし廃案ということにでもなったら、銀行の東電に対する債務者区分は、現状の『正常先』から『要注意先』に落とさざるを得なくなる。そうなった時点で東電はアウトだろう」(東電の主力取引銀行幹部)
現状の東電の経営状態を考えると、いまだに「正常先」に区分されていること自体驚きだが、「一口に正常先といっても、その中で細分化されている。東電の場合は、要注意先一歩手前の正常先だ」(前出の銀行幹部)とのこと。
つまり、東電はいつ要注意先に転落してもおかしくない状況にあると言えよう。
「もし仮に要注意先に転落ということになったら、新規融資に応じられないことは言うまでもないが、既存融資分のロールオーバー(借り換え)にも応じられなくなる」(メガバンク役員)
その資金繰りに不安を抱える東電は、これまで全取引金融機関に対して融資のロールオーバーを強く要請、金融機関サイドも積極的にこれに応じてきた。しかしここへきて、金融機関サイドの融資対応に異変が生じつつあるというのだ。
「6月末に主力取引行の一角を占める三菱東京UFJ銀行からの融資の一部が返済期日を迎えたのです。これまでだったら期間6か月の借り換えに応じてくれたのですが、今回に限っては期間1か月という条件になってしまいました」(東電関係者)
こうした三菱東京UFJ銀行の動きは、何を意味するのだろうか?
「三菱東京UFJとしては、他金融機関が借り換えに対してどのような動きをしてくるのか、その辺りを見極めたいということなのでしょう」(他の大手銀行役員)
だとするならば、取引銀行サイドも東電に対して徐々にではあるが確実に腰が引け始めたと言っていい。
こうした状況を考えても、前述の法案審議の行方には要注目だ。
※SAPIO 2011年8月3日号