霞が関改革を訴えてきた経産官僚の古賀茂明氏は、近著『日本中枢の崩壊』(講談社)で、政界や経産省、電力会社の「原発利権」という最大タブーに踏み込んだ。経産省は、事務次官からの「退職勧奨」という火消し工作に乗り出した。
ところがこの異常事態に、記者クラブからはほとんど異論が聞こえてこない。なぜか。彼らもまた、原子力村のもうひとりの住人だからである。ジャーナリスト上杉隆氏とともに、「官報複合体」の病理を暴く。
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古賀:経産省は電力事業分野に関しては、マスコミへの影響は大きいんです。
上杉:大きいですね。
古賀:最近も、ある大手新聞社からシンポジウムのパネラーに呼ばれ、他の出演者も決まり、日程調整も全部終わった段階で、僕だけが外されたんです。役員会で古賀を出すのはダメだという話になったようですね。
上杉:いまは「原発記者クラブ」だから。アメリカの『THE NEW YORKER』の言葉を借りれば、日本は政治と官僚、産業界、メディアが四位一体になった、核マフィア国家に成り下がっているんです。
古賀:その通りですね。
上杉:自民党は電力会社の集まりである電事連(電気事業連合会)、民主党は労働組合の電力総連から金をもらい、人も入っている。特に選挙の時がそう。さらにメディアは広告費と接待費で完全に骨抜きにされて、誰も文句をいえない。原子力推進が、利権というか国策の公共事業になっている。
古賀:だから、そうした電力会社とマスコミの癒着構造をなくすために、僕は「東京電力の処理策」という私案に電力会社の広告を禁止しろと書いたんです。電力会社は競争をしていないのに、なぜ広告を出さなければいけないのか。
原発事故で東京電力があんなになって、もう広告は出せないかもしれないと思っていたら、いきなり大量のおわび広告を流し始めた。そして次に節電広告。あれは「俺たちはまだまだ広告を出すよ」というサインなんですよ、明らかに。
※週刊ポスト2011年8月5日号