原発再稼働の見通しが厳しいなか、国民は目下の重要課題である節電にも取り組まねばならない。建造や普及にコストも時間もかかる太陽光や風力などの代替エネルギーなしで当面の電力不足を乗り越えるために、過去の事例から判断してマックスと思われる25%の節電を可能にする三つの対策を、大前研一氏が提案する。
* * *
一つ目は「スマートメーター」(通信・制御機能付きの電力量計)の導入だ。各企業や各家庭がこれを備えれば、電力会社側からスマートメーターを介して需要家側に電力関連の情報(消費量や単価など)を届けることで、デマンドレスポンス(需要家側の反応・応答)により電力消費量を減らすことができる。
さらに、夜間は冷蔵庫の電源を許容範囲ぎりぎりの3~4時間オフにする。スーパーなどの場合は、ショーケースをオープンにしないで開閉式にする。また、外気温との差によって設定温度を細かく調節する。日本の場合、スマートメーターは、まだ電力各社が実証実験を行なっている段階だが、早急に実用化して節電対策に活用すべきである。
それと同時に、電力料金のインセンティブ制も加味する。前年よりも使用量が1割減ったら料金を1割安くするといった方法で、節電に協力した顧客には料金で還元する仕組みである。
二つ目は、「電力警報システム」の導入だ。電力各社は電力使用状況を知らせる「でんき予報」を出しているが、あれは花粉情報のようで緊迫感に欠ける。そこで電力使用率が90%を超えたら、テレビやラジオ、携帯電話に地震警報や津波警報と同様のアラートメッセージを流し、その管内は厳戒態勢に入る。95%を超えた場合は、強制的にテレビ放送を停止(緊急放送を除く)する、なども有効だ。
そして三つ目は「根本的な電力使用量の削減」だ。具体的には、車の排ガス規制のように、すべての電気製品に消費電力の3割カットを義務づける。3~5年以内に達成できなかった製品は日本での新規販売を禁止するくらいの厳格さで臨めば、メーカーは必死で達成するだろう。
※週刊ポスト2011年8月5日号