猛烈な暑さの中、福島第一原発で作業を続けている作業員たちは、激務の汗をいわき市の風俗店などで流しているという。作業員として原発に潜入したフリーライターの鈴木智彦氏が、いわき市小名浜の風俗街の最新状況をリポートする。
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7月18日、3連休の最終日、風俗店の客入りがもっとも悪い日を選んで小名浜のソープランド街をうろついた。やはり通りに人影は少なかったが、店舗の駐車場にぽつぽつ車が停まっていたので、ぼちぼち客はいるはずだ。適当な店に上がって経営者やソープ嬢たちに話を訊いた。
「震災前の不景気のときのほうが、混雑するのは週末だけってな感じで、店は暇でした。でも、いまは曜日に関係なくお客さんが来てくれる。原発バブルって言っちゃ不謹慎だろうけど、人気がある子はご飯を食べる暇もない」(ソープランドの男性店員)
最初に入った店は、小名浜一帯で最も早く営業を再開したソープだという。自称28歳のソープ嬢はこう胸を張った。
「うちの店……オーナーが頑張り屋で、みんなに慕われているから、女の子は全員店に戻ったんだよね。震災翌日、電気や水道が止まっているのに、洗面器にお湯を貯めて営業した店があったみたいだけど、やっぱり評判が悪くて給湯施設を設置しようとなってさ、4月の第2週に工事を終えて店を開けたんだわ。
この辺は中央の施設から給湯され、個人の家にもボイラーがなかったんです。お風呂に入りに来てもらってるんだから、絶対にお湯が要るでしょう。オーナー、無理して資金を集め、数百万かけてボイラーを付けたみたい。現金が用意できず、泣く泣く廃業した店も3~4軒ある。原発作業員のお客さん……けっこう多いですね。みんな決まって『40万円の日当なんか嘘だった』と愚痴を言うから分かるっぺさ」
話を聞いてあげるのもソープ嬢の仕事だと彼女は笑うが、中には原発関係の客を断わり、常連客しか接客しない女の子もいるという。
「ワケを訊いたら、悪夢を思い出すからと言ってました。『原発事故の時は放射能が怖くて全然眠れなかった。作業員の人たちが危険な仕事をしてくれているのは分かってる。でも話を聞くと悪夢を思い出しちゃう。最近やっと普段の生活を取り戻したのに、原発や放射能とか、そんな言葉を聞くだけで気分が滅入っちゃう』って言ってました」
※週刊ポスト2011年8月5日号