がん治療の第一歩は「早期発見」に尽きる。部位にもよるが、大腸がんや胃がんなどは発見が早ければ予後も良好で、難治性のがんでも早く治療を始めるほうが進行を遅らせることはできる。ところが、7月26日に国立がん研究センターが発表した「がん診療連携拠点病院 院内がん登録2008年全国集計 報告書」には意外な事実が記されている。
がんの「発見経路」のデータを見ると、「がん検診」が全体の7.7%、がんの発見を目的としない「健診・ドック」が8.0%、他の疾患を治療中・経過観察で偶然発見された「経過観察」が25.0%となっている。
「がん検診」の占める割合が低く、他の疾患治療などで偶然発見されることがもっとも多いのである。医療ジャーナリストで現役医師でもある森田豊医師は現状の問題点をこう指摘する。
「諸外国と比較して、日本はがん検診率が低いことが問題になっています」
経済協力開発機構(OECD)の2009年調査によると、日本の検診率はわずか20~30%前後。サラリーマンの場合、毎年、人間ドックに行く人は多いが、基本的な診断メニューでは、見つからないがんも多い。
「がんが進行して症状が出てから治療をするよりも、症状がない段階で、がん検診で見つかったがんの方が小さい病巣でとどまり、転移もないことが多い。検診率を上げていくことも重要な課題です」(森田医師)
がん検診はがんに特化した検査なので、早期発見に至りやすく、結果、生存率も高くなるということだ。
※週刊ポスト2011年8月12日号