ドル円の為替相場は1ドル=76円台をつけるなど円高基調が続いている。その一方、円安トレンドへの転換もそう遠くないのではという見方も根強い。2010年後半からの為替相場を為替のスペシャリスト、松田トラスト&インベストメント代表の松田哲氏が解説する。
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FX(外国為替証拠金取引)の個人トレーダーへのアドバイスとして、今の難しい相場でわざわざトレードをする必要はないだろう。要は相場で勝てばいいわけで、下値で買おうとは思わず、トレンドがきちんと転換したことを確認した後に参入すればいいのだ。
それでは、トレンド転換の明確なシグナルが点灯するのはどこなのか。
目安となるのは、昨年9月15日の日銀単独介入(介入後の高値は85円94銭)でも、今年3月18日の先進7か国による協調介入(同85円50~55銭)でも届かなかった86円のチャート・ポイントをブレイクするかどうかだ。
86円を上に抜けていけばトレンド転換が起きたと判断してよいと考える。時間は多少かかるものの、95円、100円方向へ進んでいくだろう。相場の上昇スピードは下落スピードよりも緩やかなため、100円まで戻るのに3年程度を要するかもしれないが、個人投資家にとってみれば上昇(円安)のほうが儲けやすい。
ユーロに関しては引き続き、対ドルでも対円でも「売り」と判断する。ギリシャの財政危機を発端とするユーロ圏の不良債権問題は何も解決していないどころか、さらに悪化することが予想される。
こんな象徴的な出来事もあった。欧州中央銀行(ECB)が3か月ぶりに追加利上げに踏み切った7月7日の翌日、米国では市場予想を大幅に下回る内容の6月の雇用統計が発表された。通常ならば、ユーロ金利の引き上げも、米雇用統計の悪化も「ユーロ買い」になるはずだが、当日も翌週明けも「ユーロ売り」の展開となり、欧州の財政危機の深刻さが改めて浮き彫りになった。
ところで、米国の雇用状況の改善や景気の回復が遅れれば、ドル/円の底打ちは来年の前半にずれ込む可能性もある。そうなれば、やりようのない現在のようなドル/円相場が年内ずっと続いてしまうかもしれないが、いずれドル高・円安方向に転換していけば、外貨投資はかなりやりやすくなるだろう。
トレンドが転換すれば、早ければ1年後、1年半後ぐらいにFXブームが再燃してくるのではないだろうか。円安で空前のFXブームが巻き起こった2005年~2007年のような楽しみな相場が待っているかもしれない。勝てる簡単な相場になるまで、じっくりと様子見をするのも大切な戦略である。
※マネーポスト2011年9月号