バブル崩壊とインターネットの台頭以降、テレビ局の“安過ぎる電波利用料”を背景とした濡れ手でアワの商売に陰りが見えている。そこで各局は放送以外の「副業」に乗り出した。映画や音楽事業に参入したり、新社屋を建ててテナントを募る不動産賃貸業に乗り出したり、自社敷地内でテーマパークを催したりと、手当たり次第に業態を広げていった。
この「放送外収入」がいまやテレビ各社の収益を支えている。
例えば、テレビ通販だけで、日本テレビ108億円、TBS96億円、テレビ朝日85億円、フジテレビ82億円を売り上げる。キー局各局は連結で2000億円以上の総売り上げを誇るとはいえ、これは小さくない金額である。
不動産事業の稼ぎ頭はTBSで163億円。日テレも、汐留・麹町のテナント料収入が72億円にのぼる。
土地を提供して名前を貸すだけでカネが転がり込む「ドル箱商売」(ローカル局幹部)である住宅展示場などのハウジング事業は主に地方局が展開しているが、キー局で手掛ける日テレの関連子会社の売り上げは26億円である。
他にも、文化事業と銘打って、各局が競って開く美術展も儲かる。ヒット作「大哺乳類展」「ゴッホ展」などを主催したTBSに転がり込んだ催事事業収入は32億円だ。
もっとラクに儲けるなら、社屋敷地内で催すテーマパークのイベントが最適だ。フジテレビの「お台場合衆国2010」は、来場者数と入場料から計算すれば、53億円を売り上げたことになる(※数字はすべて平成22年度のもの)。
「民間企業なのだからどんな商売をしても勝手だろう」とはいわせない。どの事業も、公共の電波に「タダ乗り」する形で宣伝され、集客が図られているからである。
出資映画や主催イベントの告知が自局の番組で繰り返し放送される。また自局番組のDVD発売を知らせる番組内宣伝や、社屋や自前の住宅展示場からの中継など、電波がテレビ局によって“私的流用”されている実態は目に余る。繰り返しになるが、その電波はほとんどタダで彼らが使い放題なのだ。
テレビ通販に至っては、朝から深夜まで絶え間なく放送され、最近では情報番組内にわざわざコーナーを新設してまで、視聴者を誘導する。
経済法に詳しい甲南大学法科大学院教授・根岸哲氏が指摘する。
「傘下の通販会社だけは優遇して格安のコストで商品を宣伝させ、他の通販会社が同じ宣伝枠を取るためには相対的に割高な料金が発生し、それによって他社の事業活動が困難になるようなことがあれば、独占禁止法に抵触する可能性が生じます」
コンサート、サーカス、展覧会と、どんなイベントも、テレビで宣伝されるのとされないのでは、集客力がまるで違うことは子供でも分かる。
独立系通販会社の社長が、匿名を条件に語る。
「テレビの枠を1時間買うのに数百万円かかる。でも、テレビ局関連の通販会社は割安な料金で枠を買い、有名タレントが手取り足取り延々と宣伝する。どうあがいても勝ち目がない」――そうして様々な業種の企業が経営を圧迫されている。
※週刊ポスト2011年8月19・26日号