新刊『「規制」を変えれば電気も足りる』(小学館101新書)で、大昔に作られた規制制度が日本には数多く残っていて、それらが問題を引き起こしていると指摘した元経産省キャリア官僚の原英史氏(現・政策工房社長)。原氏が、思わぬところに網を張り巡らせている「規制」について解説する。
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お酒と税金は、古くから切っても切れない関係にある。税の確保という観点から、密造酒(ドブロクなど)の禁止は役所にとって重要テーマだ。酒の密造は、法律上、極めて厳格に規制されている。
昔は、梅酒や果実酒の自家製造も全面禁止されていた。それが昭和37年(1962年)に自家用梅酒の製造が解禁された。しかし、規制はまだ残っている。例えば、自家用のお酒について、こう決められている。
あくまで「自ら消費するため」だけ(酒税法43条11項)。
では、自家用梅酒を来客に出したり、町内会で配ったりした場合はどうなるか。国税庁に聞くと、答えは、「自分で飲むつもりで作って、たまたまおすそ分けしたなら適法。最初から町内会に配る分まで作っていたなら違法」という。
つまり、製造の時に「自ら消費するため」だったかどうかがポイント。梅酒を作りながら心の中で、「たくさん作って町内会にも持っていこうか」なんてうっかり“思っていたら”、たちまち「密造」になる。そして、こうした規制をうっかり犯すと、こんな重い罰が待っている。
●酒税法54条1項
〈製造免許を受けないで、酒類、酒母又はもろみを製造した者は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する〉
他にも自家用梅酒には、「アルコール分20度以上の酒で漬けなければいけない(酒税法施行令50条14項)」といった規制がある。かつてテレビの料理番組で、みりんを使って梅酒を作る方法を紹介したら、みりんが「アルコール分20度以上」ではなかった。つまり、“密造”に該当してしまうとわかり、放送局が訂正した事件もあった。
もともとは、明治時代に酒税を上げた時、酒造業界が「これでは庶民がドブロクを作る」と反発したのをなだめるために作られた規制だとされる。こんな厳しい規制を今も続ける必要があるのだろうか?