菅直人首相が“脱原発”の意向を鮮明にしているが、その影響はどのような形で現れるのか? 大前研一氏は、電力会社と原発を抱える自治体との関係に言及。「日本の原発は終わり」と指摘する。
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菅首相は「脱原発依存」を打ち出したわけだが、その影響をどこまで考慮したのか非常に疑わしい。まず、原発が立地している自治体は、その見返りとして電力会社や政府から巨額の補助金を受けているので、積極的に原発廃止を言いたくないのが本音である。
しかし、今回の福島第一原発事故では、地元自治体だけでなく20~30km圏内の周辺自治体も甚大な放射能被害を受けており、玄海原発でいえば、福岡県の西部までがその範囲に入る。それら周辺自治体にとって原発は、補助金のメリットがない上、デメリットだけを被る恐れがある。
今後は原発反対を主張してきた従来の運動家だけではなく、こうした周辺自治体も再稼働反対の動きに加わるだろう。「地元」の定義が大きく変わってしまったのだ。電力会社はこれらの周辺自治体とは従来あまり付きあいがなく、信頼関係を築くのに金と時間がかかることは間違いない。そうなれば、日本の原発はジ・エンドとなることが不可避だ。
※週刊ポスト2011年8月19・26日号